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料理の本棚坂本廣子の台所育児一歳から包丁を農文協(社団法人 農山漁村文化協会)小さなお子さんをお持ちの方々に、この本を強くお勧めします。この本は「育児書」です。2003/08/08(Fri) |
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「よかった、まだ品切れになっていなかった」。 Amazonで検索して結果を見て思ったことだ。私の書棚1.5本分の料理の本は、ほとんどが1990年代前半に買い求めたものだが、これらの本を今(2003/8月現在)紹介しようとすると、入手困難なものが多くなっている事実に愕然とする。この本はまだ入手可能ということで安心して紹介でき、そして興味を持った人に読んでもらえる。
「一歳から包丁を」という副タイトルがあるが、とりようによっては「危なくない? 」といった印象をもたれてしまいかねない。「一歳から料理・家事手伝いを」と読み替えるべきだろう。 「家庭は人生と社会の縮図」として、食教育の実践、高齢者のための火のない調理システムの普及、食の村おこしなどを行う。...(奥付の著者略歴から引用)さらに坂本さんは、この本の「はじめに」で次のようにいっている。 ...家族一人ひとりが自立して、はじめて各々の個性を伸ばせます。その第一歩が自分の「食」を自分の手につけることだと思います。これからの時代は、女性が仕事も家事もとクタクタになるより、家族一人ずつが少しずつ分けて担えばいいのです。それがパートナーシップです。それを口先だけでなく、ごく自然に苦にしないでできるようになるのには、やはり経験が第一。そのスタートは早ければ早いほどラク、そして、したいといったときがやらせどき。ちょっとの間、親はしんどいかもしれません。でも、それで長い一生自分もまわりも楽しめる基礎作りができるのですから。...(P.2より引用)現在の自分には耳が痛い指摘ではあるが、確かに納得できる主張である。坂本さんは、家族の中で自立できそうにない成人男性を再教育するのは早々に放棄して、小さな子をターゲットに教育するという高度な戦略を、声高く女性に提唱していると思うのは行間の読みすぎであろうか。 いずれにせよ「一歳から包丁を持たせるなんて危ない、非常識」という「常識」はこの本を読んでゆけば破られる。 第一章では、「台所育児ってこんなことです」と、料理・家事に参加させる個々の例をあげ、その効果について実例を引きつつ解説している。子供は本来ままごとが好きである。ままごとではなく本物の作業ができるとなったら...。自分が小さな時に大人の真似をしようとして、親にしかられたり制限された時を思い出してみよう。本物の作業ができるとなった時、子供は無限のパワーを発揮する。 次に、そうはいってもやはり親の気配りが大事、ということで、二章「子どもを台所の主役にする あんな仕掛け、こんな準備」では、安全サイドから見た数々のKnow Howを紹介している。なるほどと思うところは多い。しかし、製造メーカーに勤務する私の目からひとつだけ心配なところがあった。それはp.44〜45で包丁で切る台所仕事をする時に、お風呂場のイスにのって作業をする記述と写真がある点である。これはまずい。このような作業は非常に危険である。包丁作業に集中すると足元への注意がなくなり、ひょんなことから踏み外す危険性がある。坂本さんは、その後の文章では、適当な高さが見つからなかったら、無理に台所でやる必要もなく、居間でもどこでも、適当な高さになるところへ包丁とまな板をおいて、そこで作業すればよい、とは書いてあるので、著者も認識していると思う。 繰り返す。風呂場のイスや電話帳を束ねて、その上にのって作業をさせるべきではない。高さの低いテーブルか机を準備し、そこで作業をさせるべきである。安全第一を優先しよう。ちょうど良いテーブルがなければ、背が高いテーブルよりも、コタツのような背が低い方を選ぼう。 第三章は、「こんな道具をそろえておこう」。子供用キッチングッズの紹介をしている。この中で包丁の選び方は参考になる。この本を買った当時、我が家でも子供達用に、この本で述べられている包丁の選び方にしたがって、一人ひとり専用の包丁を買い与えたものだ。子供達にとっても「My包丁」は自尊心をくすぐられるようだ。必ず何かを切ってみたくなる。その気持ちをうまく見計らって、様々な素材を切るお手伝いをさせよう。いろいろな切り方を教えればたくさん切りたがるはずだ。 第四章はレシピ集。プロセスの少ないものから複雑な順に紹介している。 第一章、第二章がこの本の核となる部分だ。「はじめに」を引用したが、「やはり経験が第一」という点は、「まさしくその通り」。料理も本をじっくり読んでからではなく、実践がなんといっても先だ。包丁さばきは数をこなさない限りうまくならない。こういった手作業は、なんでもそうだが、若いうちに自分のものにしておけば、苦痛なんてなくて、朝顔を洗うような当たり前の作業になってしまう。 自転車に乗ること、歯並び、ともうひとつ(何かは忘れた)は親の責任といわれるようだが、これに料理をすることを付け加えるべきだろう。男女の区別なく小さい頃から家事・料理をするのが当たり前、という風に子供を育てることができたならば、そのために投入する苦労や心労は、数年もしないうちに回収できる。その時に、家族全員参加の家事生活が待っている。 最後に、子供に作業をさせる時は「汚れてもいいや」と腹をくくることが大事だ。例えば、水餃子(皮編)で触れたが、皮を作るときに、粉だらけになることは予想できたので、汚れてもいい格好でさせたら気持ちがとても楽になった。掃除なんかは後ですればよいといった割り切りを持たなければならない。 坂本さんの本でも、このあたりの大人側の気持ちの持ち方について、第二章「忍の一字でまわりはガマン」p.30〜32で触れている。数ページのことだが、これを実行するのは結構難しい。つい口や手をだしてしまい勝ち。この第二章は心して読み、実行して欲しいところだ。子供が料理や家事に興味を持つか否かは、大人であるあなたの対応次第なのだ。
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