ビタクラフトは丸元淑生さんの「新・家庭料理」で初めて知った。それまでは高い鍋セットがデパートにあるな、あんな高い物かってどうするの? という感覚であった。
私は道具を購入する時にその使用ソフトが確立しているか否かをひとつの判断基準にしている。どんなに高くてもその道具を効果的に使う方法が誰にでも分かりやすく説明されていない限り使われないであろうことは今までの経験がものがたっている。少なくとも自分で納得していないと使われなくなってしまう。道具もパソコンと同じでソフトがあって初めて機能する。その典型がこの鍋であろう。
高いからありがたがって買う趣味は貧乏サラリーマンには当然のことながらない。しかしその道具を使うと他の道具では味わえない素晴らしい料理ができる、できそうだ、となると話は別だ。そんな思いを抱かせたのが丸元淑生さんの「新・家庭料理」だった。彼の本はビタクラフトの効果的な使用方法を紹介しているまるで販促本のようにもとれる。しかし様々な本の中で彼も述べているが、ビタクラフトの有効性を早くから見抜きいいものはキチンと紹介する彼の姿勢は、当然のことながら販促本ではないことに簡単に気がつく。だからこそ「新・家庭料理」を読んだ後、無性にこの鍋を手に入れたくなった。ちなみに北九州の黒崎そごうではビタクラフトコーナーにこの本がセットで置かれている。販売戦略上有効な選択といえよう。
しかし、やはり高い。下の表の1)〜3)のベーシックセットが1990年12月当時で85,000円。普通だったらまず購入しない金額である。しかしアスパラの無水調理をしてみたい、じゃこご飯を作ってみたい、赤み肉のレア・ステーキを食べてみたい、という欲求の方が高く、私は「外食を家族で十数回したことを思えば、自分の家で納得いく材料でそこそこに安くできるのであれば、十分に元はとれる」という私の内なる説得に容易に負けてしまったのだった。また直径を数種類に規格化し、フタなどを共通して使える、鍋を組み合わせて簡易オーブン風に使えるなどのシステム的な思想が技術屋の私に強く訴えたこともある。
時は1990年12月23日。ちょうど6年前に自分用のクリスマスプレゼントとして3点セットのベーシックセットを「えいっ」と買ってしまった。ありがたいサンタだった。
表. 我が家のビタクラフト達
No | タイプ | 容量 リットル | 直径
(mm) | 深さ
(mm) | 価格 | 購入時期 |
1 | 片手なべ | 3 | 190 | 100 | \24,000 | 90/12 |
2 | 両手なべ | 5.5 | 255 | 110 | \32,000 | 90/12 |
3 | 大フライパン | | 285 | 55 | \29,000 | 90/12 |
4 | 大蒸し器 | | 255 | 95 | \13,500 | 90/12 |
5 | 片手なべ | 1.2 | 140 | 80 | \15,000 | 96/09 |
*注: 大フライパンは現在補助取っ手付きで30,000円となっている。
私が保有している上記セットのうちよく使うのが、5),1),2)だ。3)はその広い面積とフラットな底が便利なのであさりのスパゲティ用のあさりの前処理や煮魚を作る時にはかかせない。最近はよく鰈(かれい)の煮付けに使用する。鰈をならべて酒を入れ、醤油を適宜加えてフタをして火を通すだけ。これだけで簡単に煮魚ができてしまう。酒を使用するので素材の持つ味を有効に引き出し、砂糖がどっさり、醤油がどっさりの甘辛い煮魚にはならない。私も子供達も甘辛い煮魚は苦手なので、この鍋で作る魚しか食べれない体(笑)になってしまっている。不幸なことかもしれない。
ビタクラフトで作る料理は私も紹介したいが、そのほとんどは丸元淑生さんの紹介した内容になってしまう。キレイな写真とその手順は例え私が独自に作成・撮影したとしてもその影響からは避けられそうもないので紹介しにくい。興味のある方は是非、「新・家庭料理」「続・新家庭料理」などの書籍に直接あたってみてもらうのが一番だと考える。
いいことずくめのようだが、欠点が2つ。ひとつは高価なこと。もう一つは重いことだ。女性にとってはこの重さは相当応えるのではないかと思う。特に3リットルの片手鍋で料理をするとき、この取っ手をもって鍋を持ち上げる時は男の私でもしんどい。スープをよそう時に鍋を持ちながらということは子供にはまずできない。ビタクラフトはやはり煮物系での使用で鍋をふったり持ち上げたりすることはしない、と割り切るべきだろう。大フライパンなどはフライパンとしては使わない。名前にとらわれないで「広い底でかつ浅い鍋」と認識すべきだ。私はフライパンは鉄製のフライパンあるいはテフロンコーティングのアルミフライパンを主に使う。特にテフロン製は軽くて便利だ。何がなんでもビタクラフトだけで料理する必要もないし、また目的によっては道具を使い分けるのは当然なのだからこだわることはない。使いやすいものを使えばよいのだ。
今まではバーゲン対象になっていなかったビタクラフトだが、「そごう」ではお得意さま招待セール全館20%引きなどでビタクラフトも対象になっていたことを今年になって初めてしった。これは北九州黒崎そごうだけかもしれないが、外商に尋ねてみるのはムダにはならない。それで今年は上表のNo5を早速20%引きで購入。このサイズは朝のちょっとしたおかずを作るには最適で重さもあまり気にならず現在一番活躍している鍋だ。